サルのエイズ感染発表について


2002年、アニマルバスでも紹介させていただいているタケダペットクリニックに
検査に訪れたタラポアンから、エイズウィルスが発見されました。
その事で私が思った事、伝えたい事をここに書きます。
私は獣医でも専門家でもないので、先生に教えていただいた医学的な反応等の
詳しい情報は書きません。
一飼い主として個人的に思う事にとどまりますが、お猿のHPをやっているという立場から、
事実を公表することが重要と思い、それに至った経緯を含めます。


今回発見されたのは「サルエイズ」とされていますが、一般的に言われている
人間のエイズともほぼ同じものであり、他の猿にも人間にもエイズ感染するそうです。


ペットのお猿からエイズが出たというこの事実は、私達お猿飼いにとってかなり重大な問題です。
タラポアン飼いだけでなく、全てのお猿飼いが誤解をせず、
事実を理解していただくためには慎重に発表しなければいけないと考え、
先生を初め、交流のあるお猿仲間とも時間をかけて何度も話し合ってきました。


アニマルバスを見て検査を行った結果、エイズがわかり「安楽死」となってしまった
お猿がいた事、その飼い主さんが自殺を考えるほどに落ち込まれた事など
それを先生から伺った時、本当にショックでした。
でも迷わず思ったのは、お猿飼い皆が事実を知るべきだと言う事です。
その時先生からも、公表して欲しいと言われましたし、その飼い主さんも辛い中で、
他のお猿飼いの事を思い、公表を了解してくださいました。


アニマルバスに参加してくださっているお猿飼いの方々は、検査の重要性を理解し、
「お猿を飼ったらまず検査」というのがかなり定着してきているのはとても嬉しい事です。
でも、中にはまだ「うちの子は何年も元気だから必要ない」「検疫を通っているから大丈夫」
という方がいらっしゃいます。人畜共通感染症と言う言葉もよく耳にするようになりましたが
まだまだ他人事としてしか受け止められない、うちの子にかぎって・・と思われている方も
少なくありません。


今回エイズが見つかったタラポアンも、すでに6年もの間飼育され、見た目では
元気に生活していたのです。2000年以降、輸入時に行われると言う「検疫」ですが、
これは血液を採取して検査するわけでも、検便するわけでもなく、
ウィルス全般の検査ではありません。
一定期間、見ているだけ。目視検査です。感染していても発症に数年かかる病気や、
見た目では分からないウィルスがあります。目で見て分かる病気の方が限られています。

もし、検査を軽視し、ウィルスを持っているお猿を飼育している事に気が付かなかったら?
自分だけでなく、家族、友人、子供にもうつしてしまう可能性があります。
死に至る場合もあるかもしれません。


「うちの子は大丈夫」となぜ言えるのか?
自分で検査したお猿飼いだけが「大丈夫」と初めて言えるんです。検査していなければ、
大丈夫とは言えません。大丈夫と思っているだけ、思いたいだけ。

万が一を防ぐためには、お猿飼い一人一人が自覚と責任を持って、
他人事と軽視せずに考えて欲しいと思います。
一人でも多くの方に検査の重要性を理解していただくためにも、エイズウィルスを持った
お猿が実際に日本でペットショップで売られ、飼育されていたという事実を発表しようと思いました。


また今回問題にしているウィルス検査は、血液の数値検査のような、お猿の体調管理など、
「お猿のための検査」ではありません。事実アフリカのお猿はたとえエイズでも発症しない
のですから、エイズであったってお猿側は関係ないのかもしれません。
これは人間のため、飼い主である自分自身や自分をとりまく大切な人たちのための検査です。
アフリカのお猿でなくても、感染したらすぐ分かるわけではありません。
発症には時間がかかる、もしくはわからない病気です。
現在元気に過ごしていても、感染していないとは言い切れないと思います。


では、検査の結果エイズが発見されたら、家族同然可愛がってきたお猿を
必ず殺さなくてはいけないのか?
先生の記述にもある通り、エイズは感染力の弱い病原体です。人間同士のエイズだって
普通に日常生活を共にする分には感染しないのと同じです。
人間と違うのは、排泄物、汚物を手で処理する事、また噛まれる危険がある事です。
排泄物、汚物は素手で処理しない事が出来ます。
唾液では感染しないので、噛まれたら絶対に感染するわけではありませんが、
お猿は噛んだときに口内で出血する場合があるそうです。そのため、一度噛まれた
だけでは大丈夫であっても、直後にもう一度噛まれれば、感染の可能性があります。
このような事を踏まえて飼育出来るのであれば、エイズの子は絶対に殺さなくてはいけない
というわけではないそうです。
でも、それまでと同じ飼育方法では難しい事もあるし、恐くなってしまうかもしれない。
気をつけることは出来ても、絶対ではない。飼い主さんの判断だと思います。



中には、今回のエイズ発表について
「こんな事を発表されたら、猿を飼っているだけで偏見の目で見られる」という意見がありました。
では、隠した方が良い事なのでしょうか?
猿は、エイズだけではなく、多くの人畜共通感染症を持っています。
隠していたら、いつか感染者がでて、死に至るかもしれない。
それを知っているのに隠す事は出来ません。


お猿飼いとして偏見で見られたくない・・わからなくも無いですよ。
私だって「病気がうつるから近寄っちゃダメ」と子供の手を強く引いて去っていった人を見たときは
悲しかったです。「検査しています・・」なんて言う間もなかった。
でもそういう動物を私は好きで飼っているんだから受け止めるしかないと思いました。

中には病気を持ったお猿が事実いて、知らずに散歩させているかもしれないから、
その親御さんの行動は正しかったのだと思います。
お猿は恐い、病気を持っているかも?・・偏見ではなく、その通りだと思います。

検査もしていないお猿を大勢の人が集まる場所に連れ出して平気でいるお猿飼い
の方が、非常識なのではないですか?関係の無い人にまで病気をうつす可能性
があります。で、黙ってればわからない・・隠せば良いですか?
中には本当に何も知らずに悪気無くお散歩に行っていた人もいらっしゃると思います。
私も昔そうでした。だからこそ、事実を知って欲しいと思います。


私もお猿飼いとばかり交流していると、お猿を飼っていることが普通の事のように錯覚する
時があります。でもお猿飼いの間だけで通用する常識を、多数の意見と勘違いしてしまうのは
恐い事です。
「お猿飼いが肩身の狭い思いをするかもしれないから公表するべきではない」
こんなお猿飼い側だけの主張を正当化しようというのは、違うんじゃないかな。
都合の悪い事は隠してでも大勢の人に受け入れられたいという事でしょうか。
それよりも、一人でも感染する前にエイズが発見できる事の方が大事だと思います。


今回の発表をする事は、私もお猿飼いとしては勇気が要りました。
色んな意見があるでしょう。猿飼いに、肩身の狭い思いをさせることにもなるかもしれない。

狂牛病の発表、牛肉を扱う人たちは、発表で痛手があったと思う。
鳥インフルエンザだって、鶏肉業者は公になって大変だったと思います。
猿のウィルスについて、猿飼いは公にして欲しくないと思うのかもしれないです。
でも、私が相談した多くの猿飼いが冷静に今回の事を考え、発表にむけて協力して
下さった事に感謝します。
どんな結論であっても、検査や病気、お猿を飼うという事について考える
きっかけになれば、意味があると思います。
そして何より、人間に感染する前に発見できる事を願います。

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