サルエイズの発生について
2003/02に頂いた資料です。
サルエイズの発生について タケダペットクリニック院長 竹田 裕 |
昨年末、本院のサル検疫検査でサルエイズが発見されました。 タラポアンのメスで6年間飼育されていた個体です。(飼育開始時すでに成体) 今回アニマルバスのホームページを見て来院し、本院で検疫を行いました。 その結果ヒトエイズのスクリーニング検査で強陽性を示し、再検査として精密検査を行った結果 ヒトエイズでは無く、ほぼサルエイズと診断されました。 飼い主さんは本個体に飼育開始時から咬みつかれており、生理出血等の汚物の処理も素手で 行っていた事から、感染の可能性があり急きょ近隣の病院にて検査を実施したころ幸いにも 陰性でした。 サルエイズウィルスは(ヒトエイズと同じように)結核等とは異なり感染力の弱い病原体で、 飼育は可能です。しかしサルは人に咬みつく事が多く、飼育は直接に接触することは 避けるべきだと思います。また、排泄物等の飛沫も人に直接当たらないよう措置するべきです。 このような事をふまえ、飼い主さんと話し合った結果、家族の意見も飼いきれないという結論 に達し、安楽死の措置をとりました。 一般的に、アフリカ産のサルはサルエイズに感染しても症状は出ず(不顕微感染)、 アジア産はエイズ症状を起こす事があるようです。 また、ヒトはサルエイズに感染しますが、エイズを発症するか否かはまだ判っておりません。 何故なら世界的に、この疾患について経験が浅くヒトのサルエイズウィルス感染者が 今後エイズを発症するかは年数がたたないと何ともいえないようです。 本個体を購入したペットショップは既に無く、履歴を知る事は出来ませんでした。 臼歯の磨滅具合と脊椎の加齢性変化から、年齢は10才前後と思われます。感染経路は 不明ですが、外観では著しい咬傷の痕がなく母親からの垂直感染が考えられます。 今回は飼い主さんに感染が無く大事には至りませんでしたが、長期間にわたり咬傷を受けていた 事実から考えると、奇跡に近いと思われます。 不幸な結果を招かないためには、飼育する際には確実に、サルを扱える病院で、 結核、各種ウィルス検査を実施する事です。 ※平成12年1月より厚生省で実施している「検疫」は、 エボラ出血熱、マールブルグ病の検疫です。 |
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